乾癬と生物学的製剤

生物学的製剤とは2010年に登場した最先端のバイオテクノロジー技術によって作られた医薬品の事で、これまでの乾癬治療のアプローチとは全く異なった方法でこれまでの方法で改善していなかった患者さんや、重症の患者さんにも効果のあるケースが見られ革新的な治療薬として期待されています。

生物学的薬剤は主に免疫に関わる物質の働きを弱める作用を持っております。乾癬の原因や確固たる治療法など、いまだに多くのことがわかっていませんが最近になり免疫に関連する物質の過剰な働きなどでTNF-αなどの炎症を引き起こす物質が大量に作られており、それが乾癬の発症と関係していることが明らかになってきました。

最近になりさらに同様の炎症を引き起こすインターロイキン-12、インターロイキン-23なども過剰に多くなっていることも分かってきました。

このようなTNF-αなどの働きを抑制する方法で治療していく目的で遺伝子組み換え技術で人工的に作られたタンパク質を生物学的製剤といいます。

日本の乾癬治療ではインフリキシマブ、アダリムマブ、ウステキヌマブの3種類が使用されておりTNF-αの抑制の為に使用されるインフリキシマブアダリムマブインターロイキン-12、インターロイキン-23の抑制にはウステキヌマブが使用されます。

乾癬治療薬としての生物学的製剤について

乾癬治療も外用薬治療、光線治療、内服薬治療などがありますが、これらの治療でも症状が治まらないときには生物学的製剤を使った治療というものが最終的に使用することができます

どの治療を試してみてもダメだった場合の最終治療法となります。生物学的製剤は科学的な物質から合成された製剤ではありません。

生物が生成したタンパク質から作られた製剤で、乾癬の炎症、関節の腫れなどの原因のサイトカインを弱め、サイトカインの生成を抑制させることができる治療剤です。

生物学的製剤は幾つかの種類があります。一般的に今多く使われているものをご紹介しましょう。

製剤名としてはインフリキシマブとアダリムマブ、ウステキヌマブなどがあります。インフリキシマブがレミケード、アダリムマブがヒュミラ、ウステキヌマブがステラーラとなっています。

レミケードはTNF-α阻害剤で治療法としては点滴となります。方法としては初回投与、2週間後、6週間後に再投与、その後は8週間ごとに投与します。

乾癬の他にも関節リウマチ、べーチエット病、難じ製網膜ブドウ膜炎、クローン病などにも使用します。

ヒュミラはTNF-α阻害剤で炎症製サイトカインを中和します。治療法は皮下注射で2週間に1回の皮下注射となります。自己注射もできると言われています。

関節リウマチ、クローン病、強直性脊髄炎、潰瘍性大腸炎などにも使用できます。ステラーラはIL-12/23で選択的阻害、抗体製剤となります。

治療法は皮下注射で、初回投与のあと4週間後に投与、その後12ごとに1回の投与となります。ステラーラは乾癬のみの治療薬となります。

ちなみに抗TNFαとは炎症を起こすTNFαの作用を抑制するものです。TNFとは腫瘍壊死因子と言われ、サイトカインの一種で腫瘍攻撃する物質ですが、これが異常生成されてしまうことで皮膚の炎症、関節破壊につながるといわれています。このTNFαを阻害することで、乾癬治療は大きく改善されるようになりました

乾癬の生物学的製剤の副作用について

乾癬の治療でも最終治療とも言われているのが生物学的製剤治療です。でも副作用が強いこともあり、すべての人が治療できるとは限らないようです。

また100%効果が出るというものではないので、やってみなければ副作用も効果も分らないというところがあります。

特に代表的なインフリキシマブ(レミケード)やマダリムマ(ヒュミラ)についての副作用をまとめてみましょう。

マダリムマ(ヒュミラ)について言うと、5%以上の人が頭痛、下痢、上気道感染、肝酵素上昇、発疹、そう痒症、湿疹、発熱などが出ます

そして1~5%の人は不眠症、回転性めまい、浮動性めまい、貧血、リンパ球数減少、白血球増加、体重増加、減少、高脂血症、糖尿病、結膜炎、さんりゅう腫、難聴、高血圧、インフルエンザ、鼻炎、腹痛、歯周病、便秘、口内炎、嘔吐、口腔ヘルペス、ウイルス性胃腸炎、脂肪肝、アレルギー性皮膚炎、帯状疱疹、筋痛、背部痛、関節痛、血尿、タンパク尿、浮腫、倦怠感などがあります。

最悪の場合はアナフィラキシーショックなどがありますが、頻度パーセントも不明なほど極まれということになります。

インフリキシマブ(レミケード)の場合は5%以上の人は頭痛、気道感染、血尿、嘔吐、悪心、発疹、湿疹、血管炎性皮疹、発熱などがあります

1~5%の人は浮動性めまい、異常間隔、貧血、血小板数増加、火照り、高血圧、低血圧、動機、血圧低下、上昇、呼吸困難、ALP増加、尿路感染、下痢、腹痛、便秘、胃腸炎、口内炎、多汗症、発疹などがあります。

1%未満の人には頭部不快感、めまい、湿疹、味覚異常、神経痛、偏頭痛、脳梗塞、うつ病、感情不安定、リンパ節炎、白血球増加症、好中球増加症、などなどいろいろな異常が起こることもあります。

頻度は不明なほど極まれにてんかん発作や神経障害、多発性筋炎なども可能性としてのリスクはあると言われています。

このように数は少ないものの副作用はないとは言えません。それでも改善するのであれば使った方がメリットが大きい場合は続けて治療することになります。

乾癬治療で使用される生物学的製剤の費用

この生物学的製剤は値段が非常に高いのが問題で高額医療助成金で返金されるものの、一度は高額の治療費を支払う必要があります。

そしてその高額治療費を支払ったからと言って高い改善率を示すものの、必ずしも効果があるとは限らないという点も予め理解しておく必要があります。

インフリキシマブ(レミケード)は初回、2週、6週に投与しその後は約2ヵ月に1度、点滴で投与します。1回の治療で約20万円の治療費がかかります。

つまり、年間で1月に2回から始まれば2月の2週目に1回、4月、6月、8月、10月、12月とトータル約160万円近くかかる計算になります。高額医療助成金があるとは言え、大変高額になります

アダリムマブは2週間間隔で皮下注射します。価格は2回で4万3000円程度となります。

ウステキヌマブは初回とその4週後に皮下に注射し、その後は約3ヵ月に1回注射します。費用としては初年度が約33万円2年目以降は約17万円となります。

乾癬にレミケード治療がいいってホント?

乾癬の治療にレミケードを用いた治療が高い改善効果があると言われています。このレミケードとは米国で開発された薬剤で、バイオテクノロジ-の進歩によって生まれたものです。

特に免疫異常の疾患に使われますが、関節リウマチやクローン病などにも効果があると言われており、日本でも5万人が投与しているという薬剤なのです。

レミケードは抗TNFα抗体と言われ、皮膚に増えてしまったTNFαを撃退するというものです。

レミケードがTNRαと強く結合して働きをブロックし、それによってTNFαの発生を抑制するものです。特に点滴という投与法で高い効果が期待できると言われています

皮膚症状は90%近くの人に改善が見られ、変形した爪の乾癬は特に難しいと言われていますが、正常な爪に改善されることも認められており、関節破壊の進行抑制にも効果があります

また乾癬では一番やっかいな膿疱性乾癬や乾癬性紅皮症など、真っ赤に腫れ上がったような症状も大きく効果が見られるとのことです。

ただしレミケードの治療には高い料金がかかります。1回の治療は20万円以上となり、高額療養費制度の適用となります。

高額療養費制度とは一定の自己負担を超えた分が、国によって払い戻されるというものですが、それでも健康保険のように低価格になるわけではなく、相当料金的にはきつい治療となりそうです。

レミケード治療は点滴で行われますが、はじめの点滴の後、2週間ごとに1回の点滴を3回行い、計6週間行います。4回目からは2カ月に1回のベースで行います。1回の点滴には2時間程度の長い時間がかかるのも特徴です。

またレミケードによる副作用もあり、発熱、頭痛、悪心、めまい、痒み、疲労感などいろいろな副作用が人によって、さまざまなかたちで出る可能性があります。

またレミケードを使用できない場合もあります。今、他の重度の疾患を持っている人や、活動性結核の人。

またマウス由来のタンパク質を含む医薬品投与で副作用を起こした人、多発性硬化症にかかっている人や病歴のある人。そして鬱血性心不全の人などがそれに当たります。

乾癬レミケード治療について・治療費は?

乾癬の治療をしていても、やっぱり治療があまり効果がない状況になると、やっぱりレミケード治療も視野にいれることになるのではないでしょうか。

もちろん効果はレミケードでも使用した人の50%程度しか満足できる状態にはならないとも言われていますが、それでも今まで何をやっても効果のなかった人の50%なので、それは相当効果のあるものと言えるのではないでしょうか。

しかしこの治療でスムーズになかなか進まないのはレミケード治療の治療費が高額だということになるのです。

しかしとても効果のある薬剤ではあるものの、すぐに乾癬だからといって使えるものではありません。まずレミケードをしようするにはリウマトレックスが無効である場合だけとなります。

そしてこのリウマトレックスが使えるのは、その他の抗リウマチ薬が無効の場合しか使えないという決りがあります。

そうやって他の薬で改善できる人をどんどん絞っていき、それでも効果が出ないという人に、このレミケードを使用することができるのです。

抗リウマチ薬で副作用があるとリウマトレックスは使えず、リウマトレックスが使えないとレミケードは使えないということになっています。

レミケードの使用はまず初回に点滴を行いその後、2週間目、6週間目に点滴をし、その後8週間ごとに点滴を行うようになります。レミケードのリバウンドもあるのでメトトレキサートという中和抗体を同時に使います。

ここでレミケードの薬価の大体の予想必要額ですが、まず1バイアが113,190円となります。大人は通常2バイアル必要になるので、レミケード治療は1回につき23万円が必要ということになるのです。

また診察費、血液検査、レントゲン、レミケード以外の薬品なども3割負担としても8万円かかります。つまりレミケードを開始する場合、全部で諸必要費を含めて年間約200万円近くかかるというものなのです。

次の年からは8週間に1回になるので年間6回になるので料金も少し安くなります。あとは高額医療制度を利用すると、年収によって異なりますが負担がだいぶ軽減されます。とはいってもやはり高価な治療と言えそうです。

乾癬治療薬・ヒュミラとは?

ヒュミラとはアメリカでは2002年、日本では2008年に承認された生物学的製剤の一つですが、世界80カ国で37万人ほどの人たちが投与していると言われています。

TNF阻害薬として、他にもレミケードやエンブレが知られていますが、レミケードと同じく抗体によってTNFαを阻害する効果があります

TNFαは関節で異常に作られてしまうので、関節リウマチなどにも効果があります。また関節破壊進行を抑えてくれるという薬剤です。レミケードの投与法は点滴ですが、ヒュミラは皮下注射で投与することになります。

また条件が合えば自宅でも自己注射することができるので、病院に行く手間がかかりません。またエンブレなどは1週間に1~2回の投与ですが、ヒュミラは2週間に1回となります。

また同じ抗体系のレミケードは、完全ヒト型抗体によって中和抗体ができるためにリウマトレックスを併用しなければならないのに対し、ヒュミラは完全ヒト型抗体ができにくいのでリウマトレックスも必要ありません

ただし一定量のリウマトレックスの併用は日本人には体質上使う場合もありますが、投与量がまったく違ってきます。

またヒュミラは免疫の働きを低下が起こるので感染症には弱くなります。だるい感覚や口内炎、咳など少しでもいつもと違うと感じたときには、医師に相談することが必要になります。

これはどの生物学的製剤にも言えることなので、特にヒュミラだけの特徴ではありません。

価格的な面でもヒュミラは1本40mgで約7万円、生物学的製剤としてはとても安いとも言えそうです。しかし2週間に1本の投与として、自己負担は約4万円(3割負担)となります。

ここに再診料や検査料、処方せん料は入っていません。リウマトレックスなどの併用をしなければ80mgまで投与も可能とのこと。

1カ月にヒュミラ40mg投与だけでも14万円かかるので、それプラスαとなるとやはり1カ月に16万程度かかると考える必要があります

そのため治療をしたくてもなかなか思ったように、ヒュミラ治療を進めることができない人もいるようです。

乾癬の生物学的製剤を使うまでのガイドライン

医師は日本医師会のガイドラインというものがあります。医師はそのガイドラインに沿って治療を行うことがほとんどです。

ガイドラインにはその道の権威といわれる学者や医師による、病気の治療法や薬の使い方などの使用指標となります

しかし実際には医師は自分なりの治療を行っても問題はなく、薬の使い方も自分なりの使い方をしても問題はないのです。

そのためガイドラインは参考書的なものであり、強制力のあるものではありません

しかし最近の医師は自分なりの方法を持っていても、ガイドラインに沿った方法で治療を行うことがほとんどになっています。それには最近の患者はすぐに医師を訴えるということがあるからなのです。

患者が亡くなったり悪化したときに、医師の治療に間違いがあったのではないかと訴えられることが多くなっています。

そのときにガイドラインに沿った方法で治療をしていれば、とりあえず勝てるということもあるのです。そのためにガイドラインから外れた治療法は、例え最善の方法だと思ってもできないというのが医師の現実もあるのです。

そのような中で乾癬の治療に関しては、大きく4つの治療段階があります。まず外用治療、光治療、内服治療、生物学製剤治療というものですが、治療としては必ず外用治療を行って、それで改善がなければ光治療や内服治療を行います。どんなにひどい状態でもすぐに生物学的製剤治療を行うことはしません

内服治療を行ってもどうしてもダメなら生物学的製剤を使うようになります。つまり1つずつ試していって患者に効果があるものがあれば、それを続けるという方法が取られています

もし症状が初診から重症だったので生物学的製剤治療をすぐに行ったとして、もし副作用で最悪のアナフィラキシーショックなどで死亡事故でもあったら、医師は訴えられるでしょう。

そうなれば裁判ではきつい立場に立つことになるはずです。このように医師にとってガイドラインはとても大切なものになるのです。

もちろん病気に対して、あまり知識の少ない医師が治療するためにも大切なものとなっています。

乾癬の生物学的製剤の比較

乾癬では最終的な治療法として生物学的製剤がありますが、特に多く使われているアダリムマブとインフリキシマブ、ウステキヌマブについて比較をまとめてみましょう。

アダリムマブ
商品名はヒュミラで知られています。構造はヒト型モノクローナル抗体、標的はTNF-αとなります。投与の形態は皮下注射です。注射の方法は2週間隔となります。

承認状況は2010年1月に尋常性乾癬と関節症性乾癬に対応する薬として承認されています。国内の他の適応疾患は関節リウマチと強直性背椎炎、クローン病があります。

インフリキシマブ
商品名はレミケードとして知られており、構造はキメラ型モノクローナル抗体で、標的はTNF-αです。投与形態は静脈注射で、注射方法は0、2、6週以降は8週間隔です。

改選に置ける国内の承認状況としては2010年1月承認されました。尋常性乾癬や関節症性乾癬、感染性紅皮症、膿疱性乾癬などに対応しています。

また国内における他の適応疾患としては関節リウマチ、強直性背椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、べーチェット病があります。

ウステキヌマブ
商品名はステラーラという名称で知られおり、構造はヒト型モノクローナル抗体で標的はIL-12/23p40となっています。注射の形態は皮下注射、注射の方法は0、4週以後は12週間隔となります。

乾癬に置ける国内の承認状況は2011年1月に承認されました。尋常性乾癬や関節症性乾癬に対応します。国内に置ける他の適応疾患はありません。

以上3つの比較をしてみましたが、どれも料金的にはまだまだ高額治療であり、簡単に行えるとう治療ではありません。また副作用の問題もあり、どれもできるとは言い切れません

とはいっても他の治療法で効果がなかなか感じられない人でも、高い効果を見せてくれるこれらの生物的製剤は、これからも多く種類が研究されてくるのではないでしょうか。

乾癬の治療はまだまだ完治できるレベルではないので、今後完治に向けて新薬が出てくることでしょう。

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